生徒の話

私のことを「先生」と呼ぶから彼を「生徒」とここで表現するけど、何かを教えた過去は一度もない。でももう長い間先生と呼ばれている。

 

私、先日とある人の誕生日を勘違いしてまして。明日誕生日だから忘れないようにおめでとう言わないと!なんだったら0時に電話してびっくりさせよう!って思ってたのに実際の誕生日はその日だったっていうオチで。日付変わる直前だったから慌てておめでとう!って言うだけになってしまったんだけど、なんか私こういうとこあるよなぁって。友達の誕生日プレゼントもこの間遅れて買ってたしさ。本当は誕生日の前に会った時に渡せるようにしたいんだけどどうも行動が遅いんだよなぁ。ちゃんと前もって色々準備できる人本当に尊敬する。でね、こういう性格を端から見た時人は「何かと遅れがちな人」ってマイナスなイメージ持つと思うのよ。

でもさ、ちょっとオシャレな雰囲気の中

 

「おもしろい友達がいてね」

 「どんな人?」

 「毎年誕生日プレゼントを一ヶ月遅れでくれる人」

 

 って紹介されたら興味持たない!?って話を生徒としてたんだけど。

 

 「おもしろい友達がいてね」

 「どんな人?」

 「いつも誕生日の翌日に誕生日おめでとうって言ってくれる人。毎年なの」

 

 とかさ!

 

ちょっとかっこよくない?オシャレな雰囲気でオシャレな子に紹介させたらオシャレな人になれる説。

 

私はまどろっこしい話と待たされることが嫌いなんだけど、友達がね、見事に上手く話すわけです。

 

 「別に報告するようなことないねんけどな、一個だけ聞いて欲しいことある。全然おもんない話。1分で終わる」

 

 なになになに!?ってめっちゃわくわくする。さすがだわ。長く友達でいられる理由の一つだと思う。

 

 でも生徒は順序立てて丁寧に話していくから私は途中で魂が抜けたみたいになって全然頭に入らないわけです。

「待って待って待って、私今何聞かされてんの?」

って聞いちゃう。この話はどこまで続くんだろうとか、何が伝えたいんだろうとか、話が終わるまで待てないのよね。まずそれを教えて欲しい。悲しかった話、とか感動した話、とかおもしろかった話、とか。できるならタイトルとおよその所要時間を聞いておきたい。先に容量を空けないとパンクする。

 

いきなり目的も告げられずに呼ばれた部屋で、視聴覚室みたいに黒いカーテンがさーって閉められて映画始まったら「なになになに!?」ってなるでしょ!戸惑ってしょうがないでしょ!って言ったら、生徒はカーテンがさーってなった時点で何か始まる!ってわくわくしてすぐ映画に集中する姿勢を作れるらしい。なんてこった。マジかよ。

 

自己評価の低い人は相手の言ってることの方が正しいと思いがちだから、なんでこの人はこんな風に思うんだろうとかなんでそんな風に言ったんだろうとか、思考を巡らすっていう長所に繋がるかもしれないって思ったのね。ゆっくりじっくり紐解こうとして思慮深い人間になれるというか。私は自分の中にない言動は「なんやそれ。わけわからんな」って切り捨ててしまいがちでそれ以上に考えようなんてしないんだけど、そういう人たちは「きっと何か理由があるんだ」って答え探しそうじゃない?って彼に言ったら俺も自尊感情が低い方なのかもしれないって。なんでそんなこと言ったのかが気になるから相手の話ゆっくり聞くタイプって。なんでも自分が正しいと思ってる私とは大違いですな!だから何が言いたいのかと言うと、自分のことが好きではない人とか自己評価の低い人も、全ての人がそうではないにしても相手を理解しようとする能力には長けてる気がするし、決めつけることなく広い視野で物事を見れるんじゃないかなぁと思ったわけです。

 

最後に、一言で誰かに紹介する時なんて言う?っていう話題から。

 

「僕が先生を紹介するなら、一般的に人が想像する天才の雰囲気を纏った人、です」

 

って言われたんだけど、それって変な人じゃない?天才って一週間お風呂に入らないとか突然奇声を発するとかヒステリックとか変人なイメージなんだけど…。しかも天才なわけじゃなくて雰囲気だけだからもうただのおかしな人じゃん…。

 

私は彼を「頭の中に本棚のある人」って特に捻りもない形容をしたんだけど本人は「俺かっこいい…」って喜んでたからよしとする。