女性作家/柴田よしき

まだ余韻が残ってるうちに書いてしまいたい。

本を一冊読み終えた。ほぼほぼ江國香織で育って来た私は冒険することがあんまりなくて、他の人の本も読んだ方がいいんだろうなぁと思いながらもちょっと違うテイストの本を読むとまぁ落ち着かない。なんか違う…なにこれ…ってなりがち。それでも今年は何かと縁があって割とトライしてる。…方だと思う。

今回のなんてミステリーだよ!?ミステリーて!でも冒頭をパラパラっと読んだ感じ「あれ?いけるかも」と思って買ったのよ、確か。まぁその後一年くらい放置されることになるんだけど。

もう感想いくよ!言うよ!

 

 

よかった!!!

 

 

すごく読みやすい文章だった。だからと言って稚拙なわけじゃなく、賢い人が書くわかりやすい文章。ていうと私がなんかバカっぽい。私はどっちかっていうとバカが書く小難しそうな文章が好きではないのできっと相性がよかったんだと思う。なんかバカとか言っちゃった。ごめん。だってタモさんも言ってたから!難しいことを難しいまま言うのはバカだって!

正直何をミステリーと言うのかよくわかってないから読んでる最中も「これミステリーなの?どうなるの?」ってずっと思ってたんだけど読み終えてからも「ミステリー……ミステリー?まぁミステリーか……」ってな感じで誰が犯人だとか謎解きしながら読まないといけないわけでもなくラクだった。

ちなみに私は金田一もコナンも犯人当てをしたことはなく、ただただ受け取るだけの楽しみ方でやってきたんだけど、人によっては「これ犯人あの人やな」とか考えながら読んだり見たりするんだってね。びっくりした!

何が魅力だったって、豪徳寺先生ですよ。女流作家なんだけどね。すごく可愛い。私も多分、この人のそばにいたら好きになってると思う。「恋」でもなく、憧れだけでもない。この腕に掻き抱きたいとか抱き締められたいとかっていう熱情ではなく、かと言って感情がいつもフラットでいられるわけじゃない。求めて欲しいし必要だって思われたい。嫉妬もする。でも憎らしくもあって。じゃあ恋じゃなければなんなんだろう。好意を寄せるってよく言うけど、好意、ともまた違う気がする。そういうシンプルなあたたかみのあるものではなくてどっちかっていうと取り憑かれる、に近い。

女同士の「好き」とか嫉妬ってすごくギリギリの難しいところにあるなぁ。昔から周りの女の子たちの同性に向けられる感情をそばで感じながら、この子たちは異性だけが恋愛対象だと信じて疑わないからこれを恋と定義付けてないだけで、それは恋なんじゃないか?と思うことが何度かあったことを思い出した。よくある親友ポジションを取られたくない!とか一番でいたい!っていう欲からくる焦燥感みたいなものではなくて、もっとシンプルにその人自体に惹かれてて、その存在を感じられることに幸せを見出してる。

今ふと思い出したけど小学校の頃とかやたら消しゴムとか練り消しとかくれる子がいて(当時消しゴム集めるの趣味だった)私はものすごく冷静に「あ、物で釣ろうとしてるんだな」って思ってた。多分私が最近他の子に懐かれてるの見て焦ってるんだろうなって。でもそれに特別嫌悪感を抱くわけでもなく、ただ冷静にそう感じてただけなんだけど。そうなるともう別の目的が透けてるから可愛さを感じなくて魅力も薄れるのよね。だから結局は逆効果なんだと思う。それよりもっとまっすぐに「わたしを一番にして」って言われたり感情をぶつけられる方がよっぽど効果的だと思うの。目的と手段がかけ離れてる方が計算高く感じられて感情から遠退いていくせいだろうなぁ。

 

作中に興味深い会話があった。

恋愛感情とはなんぞや、という話。どういう感情を抱けばそれは恋なのか。その本の中では豪徳寺先生との関係性を問われて「その相手とセックスしたいって思うことなら、それはなかった」「でも恋愛感情ってものの正体が相手を独占したいと思う気持ちなんだとしたら少しはあった」って。でもそれを「独占欲と恋愛感情は違うものだと思うけど」って言われて「本当にそう思う?」って聞くんだけど、私はこの、「ほんと?本当にそう思う?」って聞く瞬間がものすごく好き。与えられた言葉をそのまま飲み込まずにもう一度確かめるこの手間が。でね、恋とは相手を他人に渡したくないと思うことじゃないの?っていう問いかけがあったんだけど、考えたらわけわかんなくなるよなぁ、と。好きだから他人に渡したくないし自分だけのものにしたいんだけど、他人に渡したくなければ恋じゃないのか、とか自分だけのものにならなくてもいい場合は恋じゃないのか、とか。いろんな恋愛の形があると思うけど、こういうのは考えれば考えるほど本当の気持ちが見えずにややこしくなる。
ちなみにこの渦中の人は同性間での関係について問われていて、だからこそこの議題がおもしろいなと思ったんだけど。

 

あと100年くらいしたら「恋」とか「愛」みたいにこういう感情をうまく表現する言葉が生まれてたりするんだろうか。