紙の月/角田光代
私が角田さんを最初に見た時、お母さんだ、と思った。この人のことを何も知らないのに、次の人生ではこの人がお母さんだったらいいのに、と。
こわ。私こわ。
だからこの人が書く本を読んでみたいなと思ったんだけど、このパターンは西加奈子さんに続いて二人目。
今年のベスト5には入るくらいよかった。いや、ベスト3かも。
ここまで自分じゃない誰かを事細かに書けるって本当にすごい。
傷つけられるための誰かとか、同情を誘うための何かじゃなくて何もかもがきちんと存在している。作られたものなのに嘘が何一つないと感じる。
好き。好き。好き。あー好き。
読み終わった後はこんな感じ。
「梨花のなかで二つの思いはまったく独立していた。山之内夫妻の孫の誕生を祝う気持ちと、五十万円を拝借した後ろめたさとは、まったく混ざり合うことなく梨花の内に共存していた。」p181
これものすごくわかるなって。まったく別物として相反するものが共存することってある。
「おなかの奥がふいになまあたたかくなる。光太が何を言おうとしているのか梨花は即座に理解した。」p183
好きだなぁ。溜め息が出るほど好き。さらっと書いてるから尚更いいのかもしれない。
誰かに好きだと伝える時、いかに「好き」って言葉を使わずに伝えるかが自分の中のテーマだったりするし、逆にどんな好きをもらえるのかっていう楽しみもあって…ってなんかプレゼント交換みたいね。でもそういうものだと思ってるから、私が梨花さんの相手だとして「おなかの奥がなまあたたかくなる」なんて言われたら愛しくてたまらない。
愛を、というと大袈裟だけど、想いをこうやって表現できる人って意外と少ないのかしら。詩を送り合う時代じゃないのはわかるけど、みんなそれぞれ愛し方や愛され方が違うからこそ発信することはもちろん、受信した時の反応も大事だと思うわ。
話ずれたわ。
梨花のことを私に似てると言った人がいて、だから私は尚更読むのが楽しみだったんだけど、読んでるうちに自分でもはっきりとわかった。誰かから見た自分がどこまで私の思う自分なのか。違っていたとしても、それは私が認めることのできる自分なのか。そんなことを考えながら読んだ一冊だった。
私は私の思う私を見つけてくれる人が好き。