サラバ!(下)/西加奈子

ぶわーっと体が熱くなって続きが早く欲しくなって焦って目が滑るんだよね。

特に姉からの手紙がそうだった。素晴らしかった。

これをこのまま伝えたい友達がいるけどこんな伝え方をされたってなんにも響かないだろうし、いつかあの手紙と同じようなことに気付けたり、そうなってる未来があればいいな。

想像だけではカバーしきれない物事がたくさんあるなと思う。

辛いんだろうなとか寂しいんだろうな、なんかでは到底辿り着けない程の感情の波があって、その人自身の肌でしか感じることのできない視線とか痛みが、どれだけこの世の中に存在してるのかな。

「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないよ」

この言葉の中にものすごく大事なことが詰まってるなぁ。

この間ハライチのラジオで、正義の味方は悪者を殴ってもいいのかっていう議題があったんだけど、岩井さんの答えに感心した。はーん、なるほど、と思わせてくれるもので、それが咄嗟に言葉にできることがすごい。きっと彼の中にも信念みたいなものがあるんだろうと少し興味を持った瞬間でもあった。

何か絶対的なものを持ってる人ってやっぱり魅力的だ。

癖がある人ってきっと、こだわりのパーツで家を建ててる最中みたいな感じ。

西さんの作品はこれで4つ目くらいだと思うんだけど、どれもこれも、あの人もその人もそこにいる、という感覚に驚く。姉の奇行とか歩の可愛らしい顔つきとか、それならまだしも、ヤコブの品の良さのようなものまでもがリアルに感じられる。彼の匂いや体つきがしっかりとそこにあって、私まで恋しくなった。

なんて締めていいのかわからないね。最高だった、よかった、名作、どれを選んでも少し恥ずかしい。でも今オススメの本は何かと聞かれたら間違いなくこれ。特に30を過ぎてから読むと一層いい気がする。いろんな選択肢の上で成り立ってる人生を振り返ると共にこの物語と少し寄り添えたこと、このタイミングで読めたこと、私はすごく嬉しい。

西さんが小説を書くことになったきっかけだとか影響を与えた人だとか、両親だとか多感な時期に触れてきた人だとか、みんなに感謝したいくらいだけど、それってもう「世界中のみんな、ありがとー!」ってことなんじゃないの?

世の中に少し優しくなれた気がした。