人間の顔は食べづらい/白井智之

この本を読んでる間、明らかに影響を受けた夢を何度も見た。

それくらい私にとって新鮮な類いだったんだろうなぁ。

「ミステリ」と言われるものにあまり触れてこなかったのでどう心構えしていいものかわからず、とりあえず出てくる人物とか設定とか、覚えられるように書き出しながら読んだ。結果、最後まで読み終えた感想が、「で、どういうことなの?」だった。なんだったの?って。多分ミステリ慣れしていないのだ。話の大筋はわかったけど、心をどこに置いていいのかわからない状態。

でもこれを読んで「あぁ、私は感情由来のものに興味を持つんだ。だからそこから離れてしまうと集中できないし近づくと楽しくなるのか」ということに気付けた。感覚でしかなかったものが明確に頭の中で言語化されるあのシャキッとした瞬間はとても気持ちがいい。

私が気になったのは謎解きのシーンの長台詞。

めっちゃ一人で喋るやん…。しかもがっつり括弧で閉じるやん…。

なんて言ったらいいのかな、金田一少年の事件簿なら金田一が説明してる間に美雪が絶対「もしかしてそれって…」とか挟んで何かに気付いたりする描写あるでしょ。あれがないのってすごく違和感がある。きっと周りの小さなリアクションは端折ってる体なんだろうけど、独り言やん!みたいに突っ走られると一気に現実味がなくなる。あれをみんなはどんな風に読んでるんだろって話をしてみたんだけど、「そういう人は多分こういうジャンルが合わないってことだと思うよ」って笑ってた。その人は「これはこういうもの」って感じで読んでるらしい。なるほど。アニメの女の子の髪色が当たり前にピンクだったり紫だったりすることをいつのまにか受け入れられるようになってた、みたいな感覚か。今の私にはまだ、冗談と本気の区別がついてないレベルなんだと思う。何もかもを真正面から捉えて「こんな髪色の子ばっかりの学校って風紀乱れまくりやな!」とか言ってるうちは作品を楽しめないのと一緒ね。とりあえずは目の前のものを受け入れられるようになるところからスタートなのね。

解説にも書いてあったけど、万人受けする作品なんてなくて寧ろ敬遠されてこそ、みたいなところもあるだろうから初心者の私の感想がこれでも不思議ではない。

結論:チャー坊が可愛かった。