無伴奏/小池真理子

「きみは人生が好きかい?」

と聞いた渉に対して、生きること?それとも人生そのもの?と聞き返した響子の言葉で私は彼女を好きになれるかもしれない、と思った。人生そのものは好きだとはっきり答えたことも大きい。

渉があの時点でどこまで響子を愛していたのかはわからないけど。

エマが祐之介に対する思いを響子に話すシーンが印象深い。

「『もうおまえのことなんか嫌いだ。鬱陶しい。だから別れてもらいたい』って言われたとするわね。そしたら、あたし、答えは決まってるの。『いや』って。ただそれだけ」

「だって祐之介さんに対して、プライドなんかこれっぽっちもないんだもの。けちなプライドなんか捨てちゃったの」

もう全部載せたいくらい、最初から最後までエマの全てが詰まってる魅力的な言葉。最後まで読んだ後にこれを見返すと涙が出そうになる。エマはわかってたのかな。すべてわかった上での言動だったのかな。愛する者を奪わなければいけないときもある。自分が生きるために、そうしなければいけないこともある、と言った響子と同じ思いだったんだろうか。

 

書きたいことや思うことがありすぎて全然まとまらない。

まず私が何に泣いたのかというと、渉が公衆電話から電話を掛けてくるシーン。一番苦手な展開。響子の気持ちになると本当に泣き喚きたくなる。怖くてしょうがない。だけど、そこから先と読み終えてからはずっと渉の気持ちでいろんなことを考えては泣きそうになる、の繰り返し。いろんな場面での「どんな気持ちだったんだろう」がありすぎて、計り知れなくて、悲しくなる。

愛を貫けばこんなことにならずに済んだのかな。そもそも愛なのかな。いや、愛だね。間違いなく愛し合ってたね。

初めから失っていたんだ、と気付いたって愛した事実はそれを許さないんだろうね。

なるべくネタバレしないようにと思って言葉を選んだらすごくぼんやりしたものになった。

買ったまま何年も寝かせてた本だったけど読んでよかった!