芸人交換日記〜イエローハーツの物語〜/鈴木おさむ

泣いた。めちゃくちゃに泣いた。帯に泣けるみたいなこと書いてあったけど、正直読み始めはどうなって泣くんやろ…って思ってた。ぽたぽた落ちたわ、涙。

私ね、コンビってホンマにカップルみたいで大変なこと色々あるんやろなって常日頃考えてたりするんですよ。たとえば前の相方が活躍し始めたら「あいつ頑張ってんな、俺も頑張ろ」って思える人もいればただただそれを妬む人もいるやろうし、「解散せんかったらよかった」って相手を手放したことを後悔する人もいるやろうし。組んでる間も「ホンマに俺のこと好きなん?」みたいなノリで「ホンマにやる気ある?お笑いに対してどんな気持ちでおる?」ってお互いの気持ちの方向性とか強さとか、それを確認したがったり端からそんなことは諦めてたり、確認するのも怖くて勝手に気持ち決めつけて「どうせもう好きちゃうんやろ、お前見とったらわかるわ」とか言っちゃったりさ!知らんけど!

解散するっていうのもお互い上手くいかん時期とかすれ違いとか「あれ?」って思う期間が一定あって、そこから話し合ったりなんやかんやして決まることが多いやろうからその間の心労もすごいやろうし、解散してからもコンビでやっていきたい人は新しい相方探さなあかんけどそう簡単に見つかるもんでもないし所謂振られた側は引きずるやろなーって。

だから私は芸能人のカップルの破局報道より漫才師の解散の方が「え!大丈夫かな…」ってそわそわする。

 

この本はタイトル通り、とある芸人がコンビ間で交換日記を始めるというもので、このご時世にちゃんとノートに手書きでお互いの家のポストに自ら配達する。これ、すごくいいと思う。会って話すって相手の表情を見て感情的になって思ってることを冷静に話せないし、自分のタイミングだけで書き殴るって本音を吐露しやすいよね。それでも最初はこれを持ち掛けた甲本だけがノリ気で、相方の田中はやりたくない気持ちを全面に出してるのがおもしろかった。コンビ間のコントラスト。

でもそのうち田中も思ってること書いてくれるようになってさ、田中がなんか言うてる!って喜ぶ私。

 

ネタ書いて劇場で反応見て試行錯誤して練って、でもその日によって客層も変わるからどの反応が一般的なんか判断も難しいし、そもそも自分の感覚でどこまで突っ走っていいのかもわからんようになりそう。客観視できる人って大事よね。田中みたいに。やるべきこと、大切にすべきことの芯をちゃんととらえてる人が大まかな軌道修正をしてくれるってすごいことやわ。

 

思い出を大事にするって、その人を大事にするみたいでいいね。自分の思い出じゃないものを「それは大事にしよう」って言ってくれる人がそばにいてくれることも素敵ね。

 

私どこで泣いたんやったっけ…って思い返した時、その辺りが印象に残ってる。最後の60pは割とずっとそんな調子やったけど。

何かを残すってすごい。

作品とか、日記とか、小さな思い出とか、笑った記憶とか。あと子供もそうね。

あと全然関係ないけどぽたぽた涙が落ちるような泣き方って疲れないのね。

いいもの読んだなー。誰かと心を通わせること、信じること、大切なことを再確認できました。